こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
DJI から「DJI FPV」が発売されました。
一人称視点で操縦できるドローンです。専用ゴーグルをつければ、まるでゲームの世界にいるようにスピード感のある飛行を楽しめます。
飛行スペックやカメラスペック等はDJIの公式ページを見れば一目瞭然ですので本ブログ記事では割愛しますね。
しかし、このドローンを扱う上で100%航空法に関わるため「何ができるのか?」を知らなければなりません。
今回のブログ記事では…
- DJI FPV を飛行することは航空法の何に対象となるのか?
- DJI FPV を飛行時には国土交通省の申請と安全体制はどうなるのか?
- 日本で DJI FPV を飛行させる方法・場所を考察すると?
この3点を中心に「日本国内でDJI FPVを飛行させる法律的な約束事」について情報シェアします。
ドローンは、どこでも誰でも自由に飛行できるものではありません。
航空法に則って飛行させるのが大前提です。
※この記事ではFPV飛行を対象としています
このページに書いてあること
どうすれば航空法をクリアして「DJI FPV」を飛行できる?
日本には航空法が施行させており、重量200g以上である「DJI FPV」は規制対象となります。
そのため、飛行できないエリアや禁止された飛行方法などが存在しています。
「DJI FPV」を飛行させるには…
- 所定の飛行訓練をおこない、かつ飛行10時間以上をする
- 目視外飛行の飛行訓練を屋内でおこなう
- 国土交通省航空局に飛行申請をおこなう
- 飛行する場所では、監視員を2名以上つける(操縦者は人数に含まない)
- 飛行する場所の土地の管理者に了承を得る
上記の5つの項目をクリアすれば、DJI FPV を飛行できるようになります。
これらをクリアしていない場合は、航空法違反や各法令違反になる可能性が高いため、「DJI FPV」を飛行するには…
- 操縦技量
- 安全対策
- 法律の知識 等
がMUSTになることは間違いありません。
では、なぜ5つもの項目があるのか、法律的な制限は何なのか、順を追って説明します。
DJI FPV を飛行することは航空法の何に対象となるのか?
DJI FPV は航空法の対象になります。
これは DJI 商品ページにも記載があり、めちゃくちゃ小さな注釈ですが…
注釈の1に法律について記載があるとおりです。
以下、大切なことなので引用します。
DJI FPVの飛行前に、必ず現地の法律や規則を確認してください。安全に飛行し、現地の法律や規則を遵守していることを確認してください。日本国内において屋外でゴーグルを使用しての飛行は目視外飛行になり、航空局からの飛行の許可・承認を取得する必要があります。また、使用中に飛行安全性を確保するため、補助者を設け、飛行環境を監視してもらう必要があります。
公式サイトにも記載がある通り、
- 屋外でゴーグルを使用する飛行は目視外飛行になる
- 安全性確保のため、補助者を設け、飛行環境を監視する必要がある
とあります。
航空法では、ドローンを飛行する際に「操縦者が直接ドローンを見ている状態」で飛行することとしています。
ゴーグルをつけた状態では操縦者がドローンを目視できない状態のため、航空法で禁止されている「目視外飛行」に該当します。
「DJI FPV」を飛行すると、常に「目視外飛行」の状態になるため、
- 日本中のどの場所でも
- どの飛行方法でも
国土交通省航空局に飛行申請をおこない、許可を得て、飛行条件に沿った飛行をおこなわなければ違反となります。
ドローンをちょっとかじった人が勘違いを起こしやすいのですが、飛行禁止エリアとなっている人口集中地区ではないエリアだとしても「目視外飛行」のため申請が必要です。
例えば、ど田舎の、誰もいない海岸だとしても、国土交通省航空局に目視外飛行の申請をしなければなりません。
つまり、この「DJI FPV」は常に国土交通省航空局への申請がセットとなります。
DJI FPV を飛行時には国土交通省の申請と安全体制はどうなるのか?
「国土交通省に飛行申請すれば、これで目視外飛行もできるんでしょ?」
そう勘違いしてしまうひとが多いため、より必要な手順を解説していきます。
所定の飛行訓練をおこない、かつ飛行10時間以上をする
誰でもがドローンの飛行申請を行えるわけではありません。
所定の飛行訓練および飛行時間が、申請する上でのファーストステップとなります。
考えてみれば誰でも分かると思いますが、ドローンを触ったことのない未経験者に、国の機関が許可を出すのか?と言ったら可笑しい話ですよね。
まずはドローンの操縦技量を習得しなければなりません。
プロポの操作に慣れるため、以下の内容の操作が容易にできるようになるまで 10時間以上の操縦練習を実施する。なお、操縦練習の際には、十分な経験を有する者の監督の下に行うものとする。訓練場所は許可等が不要な場所又は訓練のために許可等を受けた場所で行う。
操縦講習は十分な経験を有する監督のもとで10時間以上の操縦練習を実施、と記載があります。
さらに、10時間をフワフワと飛行させるだけではなく、所定の基本的な操縦技量の習得訓練をおこなうこととなっています。
十分な経験を有する監督のもので、10時間というのはハードなもので。
まずは、これをクリアしないといけませんし、そもそも、この初級レベルの技量であっても、なかなか「DJI FPV」は扱えなさそうで…すぐに壊すだけですね。
目視外飛行の飛行訓練を屋内でおこなう
上記の目視での飛行訓練を完了した後、さらに「目視外での飛行訓練」が必要です。
「なんだそりゃ?」と思うかもしれませんが、そもそも目視外飛行は、さらに高レベルを求められるわけで。
目視外飛行における操縦練習
目視外飛行においても、2-2に掲げる操作が安定して行えるよう、訓練のために許可等を受けた場所又は屋内にて練習を行う。
屋内にて、所定の基本的な操縦技量の習得訓練を目視外で安定的に飛行できること、となっています。
国土交通省航空局に飛行申請をおこなう
飛行訓練や所定時間をクリアした上で、国土交通省航空局に飛行申請をおこないます。
飛行禁止エリア(人口集中地区)ではない場所でも、目視外飛行に該当するため、必ず飛行申請をおこなわければなりません。
国土交通省航空局では2通りの申請をおこないます。
- 個別申請(エリアを定めた申請)
- 包括申請(反復する業務を前提としたエリア・期間に幅がある申請)
「どっちがいいのか?」と迷う人がいるかも知れませんが、もし趣味で飛行させる場合には、個別申請のみの受付となっているので覚えておきましょう。
また、業務で「DJI FPV」を飛行する場合だとしても、包括申請であると、航空局マニュアルでは、人口集中地区および夜間での目視外飛行は許可されませんので注意が必要です。
・人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。
・夜間の目視外飛行は行わない。
そのため、必然的に「個別申請」がベターだと思われます。
飛行する場所では、監視員を2名以上つける(操縦者は人数に含まない)
国土交通省から飛行許可が下りたら、飛行条件に合わせた安全対策を実施しなければなりません。
(許可が下りる=自由気ままに飛行できる、ではないですよ)
飛行マニュアルに記載のある規定を抜粋すると…
3-1 安全を確保するために必要な体制
- 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
- 補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲 の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。
3-8 目視外飛行を行う際の体制
- 飛行の前には、飛行ルート下に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等を有する補助者のもと、目視外飛行を実施する
- 操縦者は、目視外飛行の訓練を修了した者に限る。
- 補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。
安全対策に必要な人員と体制について記載がありますね。
まず、監視員は少なからず2名以上は配置しなければなりません。操縦者を除いて2名以上です。
まず1人目は、飛行する範囲に第三者が入らないように「ドローンが飛びますよー。入らないでくださいねー」と注意喚起をおこないます。
飛行範囲が広い場合には1人ではカバーできないため、さらに増員が必要ですね。
2人目は、1人目とは別の位置に配置して、飛行エリアの全景や気象条件を監視できるようにします。
さらに飛行する前に、双眼鏡を有して第三者が通っていないか、その飛行範囲のすべてをチェック。この飛行に当たり、監視員はドローンの特性を十分理解している必要もあります。
飛行エリアが50mくらいだったのなら、2人で安全対策を施せると思いますが、「DJI FPV」のようにビュンビュンと飛び回ることを考えると、地上ではとんでもない人数が必要になってきそうです。
飛行する場所の土地の管理者に了承を得る
もちろんドローンはどこでも飛行させて言い訳ではありません。
土地管理者の承諾というのが飛行の前提になります。
金閣寺で急にドローンを飛行させたら問題になるのは想像にたやすく、また海水浴場といった場所でも条例で禁止されていることもあります。
「ドローンを飛行させていいですか?」
という確認は必要になってきますね。
https://www.drone-enterprise.com/blog/8526
ここまでですべてをクリアしたら目視外飛行で DJI FPV を飛行できるようになったというわけです。
日本で DJI FPV を飛行させる方法・場所を考察すると?
「おいおい、これじゃ、飛行まで到達できない。罠じゃないか!」
そう思われるかもしれません…が、これが日本でのルールとなっています。
DJI FPV のサンプル動画はかっこいいです。本当にスピード感&スリル感は、アドレナリン全開になるホビー向けのドローンです。
しかしサンプル動画は「海外で撮っている」のだからできることであって、日本で同様のかっこいい飛行をするのは、かなり条件を揃えなければならなそうです。
では、現実的に「DJI FPV を飛行させる方法・場所」を考えてみます。
最も考えられるのは海岸です。
このような誰もない海岸だった場合は、航空法やマニュアルに合わせた飛行が可能だと思われます。(海岸の要承諾)
前述したように国土交通省航空局に申請をする際に、飛行エリアや監視員の配置場所を記すのですが、例えば、この海岸だったら↓のような体制になりますね。
海を飛びつつ、地表の近くも飛行する。
この立地でだと操縦者+監視員3人体制がベターです。
これなら目視外飛行をしつつ、安全対策に則った飛行が可能だと思われます。
障害物でその先が見えないような飛行エリアは難易度が上がる
もし障害物で見えづらい場所を飛行するとしたら、監視員の体制を用意周到にしなければなりません。
たとえば、森の中を通り抜けるような飛行場所だとしたら、その飛行範囲に監視員を配置することとなります。稀だと思いますが、登山者がいたり猟師がいたりしますから「第三者が入らないよう監視」が必要です。
監視員にとっては、マジで罰ゲームですね。
「DJI FPV」で飛行するためにはクリアするべき事柄がある
ここまで書いてきたとおり、DJI FPV を買ったとしても「誰でもどこでも飛行できる」わけではありません。
DJI FPV の商品ページにも記載があったとおり
DJI FPVの飛行前に、必ず現地の法律や規則を確認してください。安全に飛行し、現地の法律や規則を遵守していることを確認してください。日本国内において屋外でゴーグルを使用しての飛行は目視外飛行になり、航空局からの飛行の許可・承認を取得する必要があります。また、使用中に飛行安全性を確保するため、補助者を設け、飛行環境を監視してもらう必要があります。
日本国内では、航空法に則った飛行ルールを遵守しなければなりません。
「DJI FPV」を飛行するためには…
- 所定の飛行訓練をおこなう
- 目視外飛行の訓練をおこなう
- 個別申請で場所・飛行方法などを記載して国土交通省に申請する
- 飛行場所の土地の管理者の承諾を得る
- 所定の安全対策を施す
これらをクリアして「DJI FPV」を飛行できるようになります。
DJI FPV は今までにないドローンの魅力を引き出してくれる素晴らしいドローンです。
趣味でドローン飛行が飽きてしまった人でも、このスピード感でアドレナリン全開になるのは間違いありません。
ただ、守るべき法的なルールは守らなければなりません。
今まで以上にスピードが出るということは、コントロールするのも難しくなり、なおかつ第三者への危害は相当深刻なものとなります。
上記のすべてを理解した上で「DJI FPV」を楽しむのがいいですね。
あとがき
これを飛行させるのは爽快でしょうね。
こういった飛行方法はロケーション命ですから、飛行する条件を整えるのが最も重要かもですね。