こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
2015年に航空法が改正された後、ドローンが法律の対象となって約5年の月日が経ちました。
目まぐるしいようにドローンが進化・普及していき、同時に新しい産業が生み出されつつあります。
2021年以降、ドローンはいくつかの法整備をおこない、ドローン産業の拡大および安全対策を施すため、実質的にドローン規制が強化しています。
今回のブログ記事では…
- 2021年以降に予定されているドローン規制は何なのか?
- 規制が強化される理由、そして未来はどうなるのか?
- ドローンユーザーが対応すべき事柄は何なのか?
この3点を中心に「今後、どのようにドローンと向き合っていけばいいのか」について解説していきます。
各メディアからニュースが出ていて混乱しているかもしれませんので、このブログ記事ではさっくりとまとめていきますね。
このページに書いてあること
2021年以降、ドローン規制がどのように強化される予定なのか?
この記事を書いている時点で、ドローン規制で予定されている追加点や見直し点のは4つです。
- ドローン登録制度(2021年~2022年予定)
- ドローン免許・ライセンス制度(2022年予定)
- ドローン機体認証制度(2022年予定)
- 航空法対象ドローン100g以上(2022年予定)
この4つを新設する目的は「安全性の向上」および「産業の促進」の2つの観点からです。
すでに審議会で話がまとまりつつあり、2022年には新しいドローン規制がスタートする予定です。
では、1つ1つについて解説していきます。
新規に加わる予定のドローン規制4つとは?
ちょっと長めですが、理解を深めるためにじっくり読んでくださいね。
01.ドローン登録制度
- 開始予定:2021年~2022年予定
- 影響力:★★★★☆
飛行させる重量200g以上のドローンの「所有者情報」「機体情報」などを国土交通省に登録する制度です。
これは法律としてすでに制定することとなっており、施行された後、未登録のドローンを飛行させると「懲役1年以下または罰金50万円以下」に処されます。
この制度が導入に至った背景としては…
- 無許可ドローンが飛行して安全を阻害する
- 関西国際空港に幾度かドローンが侵入して滑走路封鎖など多大な影響が出ている
などです。
現時点では申請方法などは未決定となっていますが
- ドローン機体の情報を登録する(機体名・シリアルナンバー・製造者など)
- ドローンの所有者を登録する(氏名・住所・連絡先・マイナンバー)
- 1回の登録期間は3~5年
- 登録料は現時点で未定
となっており、申請および登録方法は…
- 所定の方法で申請をする
- 登録番号のシールが送られてくる
- ドローンの機体にシールを貼る
これでドローンの登録が完了するというわけです。
同様の仕組みは、すでにアメリカで導入されており、FAA(連邦航空局)に機体登録(登録費用は5ドル、有効期限は3年間)が義務付けられています。
日本は後追いになっていますが、「今まで実施されていなかった」ことが不自然であったため、ドローンの未来の方向性では致し方ないと感じられる制度です。
詳細は↓に記載しています。
02.ドローン免許・ライセンス制度
- 開始予定:2022年予定
- 影響力:★☆☆☆☆
特定の飛行場所・方法の組み合わせに限って、技能や身体能力等を踏まえた「免許・ライセンス」が必要になる制度です。
- DID(人口集中地区)の第三者の上空
- 目視外飛行
この2つが合わさった場合に限って、クルマ運転の免許のようなライセンスを取得しなければなりません。(逆にいえば、上記の組み合わせ以外は、ライセンスは任意or不要です)
現在想定されている取得方法は、クルマの教習所と同じように…
- 国から指定を受けた指定試験場で試験・テストをおこない合否判定する
- 原則的には、指定試験場は1者(1社)となる
- 試験場にて学科試験および実地試験をおこなう
- 身体能力(視力・聴力・運動能力)なども基準に含まれる
- 操縦ライセンスの期間(例:3年)を設け、更新時には必要な講習を受ける
といった、正式的なドローンの免許・ライセンスとなります。
「ドローンを操縦する、すべての人が必要なのか?」といったら、99%の人は不要です。
そもそも、このドローン免許・ライセンス制度を設ける背景には、ドローン宅配の産業拡大に向けた取り組みだからです。
- 政府としても地域の過疎化や人手不足に伴い、ドローン等による宅配を促進させたい
- 現状の航空法では、DIDでの第三者の上空には大きな制限があり、法律的に宅配を進められない
- ドローンの操縦ライセンス制度を設けて、この問題をクリアにする
先述したとおり「DID(第三者の上空)」×「目視外飛行」の組み合わせで、この操縦ライセンスが必要になってきます。
ここで想定されるのが、DID内でのドローン宅配です。
すでにDID外でのドローン宅配は実証実験や試験運用がおこなわれており、「次はDID内だ!」という段階まで来ているからです。
この免許制度化については審議会で話が進められており、飛行方法の「レベル4/カテゴリー3」の枠は要ライセンスとして決定する方向です。
今後、免許制度の拡大化があるかもしれませんが、今の段階では「ドローン宅配のためなのね」とざっくり認識しておくと、心が休まると思います。
詳細については↓からどうぞ。
03.ドローン機体認証制度
- 開始予定:2022年予定
- 影響力:★☆☆☆☆
これは「02のライセンス制度」でドローン飛行させる場合に限って、事前に安全性が確認できるかどうかをチェック、そして型式認証を受けた場合に飛行できるという制度です。
また機体整備についても、所有ユーザーは技術を有して整備することを前提としています。
なんだか大きな話になっていますが、つまりこれも「DID(第三者の上空)」×「目視外飛行」の飛行に限っては、きちんと安全性が確約を取れたドローンのみにするため、認証制度を設けているというわけです。
一般ユーザーの99%は無関係であり、ドローン宅配の産業化を勧めているメーカー等が該当すると思われます。
04.航空法対象ドローン100g以上
- 開始予定:2022年予定
- 影響力:★★★★☆
今の航空法では重量200g以上が対象となっていますが、これを重量100g以上に引き下げる方針という話です。
5年前の段階では「100g台のドローンなんて、おもちゃだから危害にならない」と考えられてきました。しかし技術革新が進むことで、重量199gでも超有能なドローンも出てきています。
そのためニュースの報道になりますが…
普及が進む小型無人機(ドローン)について、政府は、これまで200グラム以上としていた航空法の規制対象を拡大し、100グラム以上にする方針を固めた。小型でも飛行速度が速いドローンが手軽に入手できるようになり、危険性が増していることを踏まえた。今後、省令を改める。
規制対象を拡大して重量100g以上に変更する方針を固めたとのこと。
DJI Mavic mini といった199gのドローンや、アマゾン等で販売されている100g以上のドローンは数多く存在しており、正式に施行された場合には影響は大きそうです。
規制が強化される理由、そして未来はどうなるのか?
「いろいろとドローン規制はてんこ盛りだなぁ」
そう感じる方も多いかもしれません。
2021年以降に施行される予定の各制度には、明確に2つの理由があります。
- ドローン飛行の(第三者に対する)安全強化
- ドローン産業(主に宅配)の拡大化
ドローンが普及していた現在では、決して「すべての飛行が安全である」とは言えない状況です。
これは事故報告件数が増加していることはもとより、ドローンに関わる事件や警察対応が増加したり、違反飛行する操縦者が跡を絶たないのも考えられます。
安全ではないということは、いつかは第三者に危害を与えることとなり、それは被害者にとっては悲しい事件となります。
今回の制度化を検討している段階から、「第三者の上空の飛行」が焦点となっています。現行では「第三者の上空は飛行できない」が絶対だからです。
裏を返せば、街中の上空を無関係に飛行させることは100%違反といえます(※一部の無法者および業者が蔓延っていますが…)。
そして、安全面を確保しつつ、ドローンの本命的な産業として「ドローン宅配」をメインとして「ドローン検査」などを、DID内でスムーズに実施できるように法整備をおこうのが本制度化です。
産業に関わる人にとっては、実質的に規制の緩和とも言えますね(私も賛成です)。
この制度化の話は、まだ審議委員会で検討を重ねている段階です。100%決定したわけではありません。今後変更されるかもしれません。
ただし、実はもうちょっと先の未来も見え隠れています。
ドローン操縦ライセンス制度の拡充化
操縦ライセンスについては、前述したように「DID+目視外飛行」について厳格化されるのは間違いありません。ライセンス化された場合には試験場が設けられて、そこでの試験実地となります。
それ以外に関しては、現行のように国土交通省航空局が個別審査・承認をおこなうこととなっています。
しかし、厳密には、ライセンス化は2種類となる方法が取られるかもしれません。ここでは名称を下記のようにします。
- 操縦ライセンス(カテゴリー3)
- 操縦ライセンス(カテゴリー2限定)
カテゴリー3については、何度も記載している「DID+目視外飛行」の飛行であって、ドローン宅配などを中心に実施するための操縦ライセンスになります。
「では、その下にあるカテゴリー2限定って何よ?」と思いますよね。
これは、今でいうと、飛行場所を限定しない「包括申請」用のライセンスです。
つまり、包括申請をして年間を通じた飛行をさせたい場合、操縦ライセンス(カテゴリー2限定)が必要になってきます。
もし包括申請と同様の許可を取りたい場合、
- 試験場にて試験・実地をおこなう
- 身体能力の試験をおこなう
- 機体認証制度に則って登録および整備をおこなう
といった操縦ライセンスおよび機体認証が必要になります。
現行の制度と比べると
- 個別申請 → 操縦ライセンスの取得は任意
- 包括申請 → 操縦ライセンス(カテゴリー2限定)は必要
となるよう審議されています。
このあたりはドローン業者にとっては、個別申請のままで各飛行をおこなっていく方法でも問題ないですし、操縦ライセンスを取得するのもありだと思います。それぞれの考え方次第ですね。
これは勝手な予測ですが、この薄っすら先の未来に関しては、試験場の運用がきちんと機能してから…だと思っています。民間レベルの試験場では、カテゴリ3のライセンス対応だけ手一杯ですから、きっと。
ドローンユーザーが対応すべき事柄は何なのか?
以上の2021年から予定されているドローン規制に対して、ユーザーはどう対応すればいいのか…についてです。
この答えは1つです。
「絶対にドローンの情報から目を離さないこと」です。
今後、法律的なドローン規制が続々と施行されていくと思われます。一番危険なのが「知らぬ間に違反をしていた」ということ。
例えば、重量200g以上のドローンを所有していて、押し入れにしまっていた…としましょう。
- そういえば、ドローンを押し入れにしまっていたなぁ
- 久しぶりにドローンを飛行させてみようか
- 以前から知識は持っていから大丈夫でしょ
…と思っていたら、ドローン登録制度が施行されていて「未登録でドローンを飛行させていた」ということになりかねません。
重量199gの Mavic Mini の所有していたとしても、知らない間に「航空法の対象になっていた」ということあり得ます。
とにかくドローンを所有している限り、主体的にドローンの情報を取っていく必要があります。「知らなかった」では済まされないですから。
ドローンを扱う限りは「最新情報と向き合う」のが鉄則です。
この記事で書いたことは、まだ検討中であり未決定です。今後変更されることもあるので、個々でアンテナはしっかりと張ってくださいね。
あとがき
私自身は、ドローンに関わっている仕事をしていますし、展示会などにも足を運んでいたりするので感じていますが、ドローンの大きな方向性は圧倒的に産業開拓に向きつつあります。
ホビーで楽しむと言うよりかは、機会としてのツールとして「どうやって産業をつくっていくのか」が主体であって、そのための法整備。
1に産業、2に産業、3と4がなくて、5にホビーでしょうか。
「そんなこと言わないでー」と聞こえてきそうですが、リアルにこの記事で書いたとおり「安全性」と「産業の促進」が物語っていると思います。
地域の過疎化、高齢化などの社会的な問題を軽減するためのドローン。これは間違いありません。
その社会がベースにあった上で、ホビーとして楽しむドローンという位置づけになるかと想像しています。
何にしてもドローンの情報は滞りなくチェックしてください!