こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ドローンによるテロや事件が増加してきたこともあり、日本でも警察によるドローン対策が進んでいます。
2019年、ビッグイベントでもある「天皇即位」がありました。
警察が警戒態勢を敷いたのは当然のことで、その警戒対象のひとつとしてドローンの警戒を強めています。
この「天皇即位」での警察の動きは、今後のドローン対策のヒントになるのではないでしょうか?
今回のブログ記事では…
- 警察がなぜドローン対策を急ぐのか?
- 具体的なドローン対策は何だったのか?
- 今後のドローン対策はどのようになっていくのか?
という話を中心に、ドローン対策について考察していきます。
ドローンを扱うことで「知らぬ間に警察に捕まる」可能性があることを決して忘れてはなりません。
ドローンはラジコンではありません。ドローンはテロの対象物にもなりますから。
このページに書いてあること
ドローンに関わる事件が増加している
ご存知のかたがいらっしゃるかもしれませんが、ドローンによる事件を目にする機会が増加してきました。
海外では大統領暗殺(ベネズエラ)の未遂事件まで起きており、日本でもドローンによる緊急安全対策を協議しています。
- 焼夷手りゅう弾搭載ドローン1機が、ウクライナ東部バラクリヤに所在する弾
薬庫を爆破した事案(平成29年(2017年)3月23日)- ドローン 13 機が、シリア駐在ロシア軍フメイミム空軍基地を攻撃した事案(平成30年(2018 年)1月5日)
- ベネズエラ大統領の暗殺未遂事案(平成30年(2018年)8月4日)(ただし、米国等では自作自演との報道あり)
ドローンはテロ兵器として、安価に確実に利用できるツールでもあります。
日本では海外のように大事件までは至っていないものの、2019年5月には皇居周辺でドローン飛行疑惑が発生。
ドローンと見られる物体を執拗に飛行させ、2度目は警察へ挑発したと感じさせる事案でした。そして未だに犯人は特定されていません。
「ドローン対策が構築できていないのでは!?」と感じた方が多いのではないでしょうか?
また、関西国際空港でもドローン飛行の目撃情報によって、滑走路を一時閉鎖する事態になりました。
合計24便が到着地の変更や出発地に戻るなどの影響が出ています。
関西空港にドローンか 2度にわたり滑走路閉鎖 24便に影響
7日夜、関西空港でドローンのようなものを見たという通報が寄せられ、滑走路が2度にわたって閉鎖され、合わせて24便に目的地の変更などの影響が出ました。
(中略)
2度にわたる滑走路の閉鎖で関西空港への到着便のうち8便が目的地を中部空港に変更したほか、1便が出発地の羽田空港に引き返しました。
さらに出発と到着合わせて15便に最大でおよそ2時間の遅れがでました。
関西空港では先月19日にもドローンのような物体の目撃情報が寄せられ、滑走路が一時閉鎖されるトラブルが起きています。
関西国際空港は2019年10月そして11月と、2回に渡ってドローンによる滑走路閉鎖を余儀なくされています。
たった1機のドローンで空港機能が停止するのは、もはや事件というかテロに近いですよね。
もし飛行機のエンジンの中にドローンが入り込めば、当然ながら飛行機事故を誘発します。また、ドローンに爆発物を積んでいたら、飛行機を危機的な状況に追い込むことも可能です。
そして、この事件も未だに犯人は特定されていません。
ドローンによるテロを考えるに、現時点でもっとも効果的な犯罪ツールではないでしょうか。
- ほとんどの確率で犯人が捕まらない
- 数十万円程度の安価で作成できる
- GPS等と使用すれば標的への攻撃に確実性が増す
ドローンは一歩だけでも使い方を変えれば、犯人が特定できない武器になる。本当に最強だと思います。
ドローン対策はどのように行われているのか
ドローンによる事件やテロを防止するために、早急なドローン対策が必要とされています。
2019年に天皇即位にあたって「どのようにしてドローン対策を施してきたのか」を振り返れば、具体的なドローン対策が見えてくるはずです。
- 法律的な対策
- 事前要請
- 警備方法やツール
この3つの視点で書いてきましょう。
小型無人機等飛行禁止法による飛行禁止エリアを設定
航空法とは別に設けられている法律、それが小型無人機等飛行禁止法です。
警視庁管轄で運用している法律で、違反すると「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処されます。航空法よりもやや重いですね。
ざっくりと、法律を説明すると…
- 国の重要機関(国会議事堂や原子力発電所など)の周辺で飛行禁止
- 防衛関連施設や特定イベント、また関係者の施設、輸送の空港の周辺で飛行禁止
この2つが要件になっています。
もし定められた飛行禁止エリア指定で飛行させたい場合には、管轄警察署に届け出をして受理をされれば、一応はドローン飛行できます。
しかし厳しい条件があるため、あまり現実的ではありません。
もともとは国の重要機関だけが飛行禁止エリアとして定めていたのですが、2019年5月24日に改正法が国会で成立。
あらたに天皇即位関連の行事、およびラグビー・東京オリンピック関連のエリアも飛行禁止に加わりました。
このように改正法を成立させれば、今後どのようなビッグイベントでも対応できる。それが小型無人機等飛行禁止法です。航空法よりもかなり柔軟に適用できそうな法律ですね。
今回の天皇即位の行事でも、行事の日時や場所が異なっていたとしても「天皇即位の行事」としてすべてに適用させて法律的にドローン飛行禁止にできます。
そしてドローン禁止エリアで、もしドローンが飛行していたとしたら…
警察官等は、本法の規定に違反して小型無人機等の飛行を行う者に対し、機器の退去その他の必要な措置をとることを命ずることができます。 また、一定の場合には、小型無人機等の飛行の妨害、破損その他の必要な措置をとることができます。
その場で警察官が破壊措置が認められています。これも公に認められたドローン対策と言ってもいいですね。
事前要請(注意喚起・飛行自粛など)
ドローン対策として天皇即位の行事には各警察より事前要請がありました。
例えば「ドローンを飛ばしてはいけないよ、の注意喚起をしてほしい」ということで…
- ドローンメーカーのDJIが啓発する
- 各ドローンスクール が啓発する
- ドローンに関係する販売店等が啓発する
などの民間会社への要請です。
さらに国土交通省でもドローンに関わるWEBサイトで…
警察庁からの要請により「小型無人機等飛行禁止法」に基づく飛行禁止区域外の関係地域上空においても、無人航空機の飛行を自粛していただきますようお願いします。
○飛行自粛要請地域
東京都千代田区、港区、新宿区
そもそものドローン飛行自体の自粛をするように促して、区単位で自粛要請地域を設定。
もう根本的に「ドローンはやめてくれ」という話ですね。
警備方法と対策ツール
国民にお披露目をする天皇即位のパレードの際には警察官など2万6000人を招集して厳戒態勢の中おこなわれました。
観覧車ブースに入るためには手荷物検査を受ける必要があり、持ち込み禁止物のひとつとして「ドローンや上空を飛ばすおもちゃ」が指定。
さらに外部から飛行してくるドローンに対して、ドローンジャミングガンを従来の3倍以上に増やして警備したとか。
ドローン対策「ジャミングガン」3倍増で警備 祝賀パレード
10日に行われる天皇陛下の即位を祝う祝賀パレードで、警察当局が不審なドローンを妨害電波で阻止する「ジャミングガン」を従来の3倍以上に増やして警戒にあたることが関係者への取材でわかりました。(中略)
ドローンテロの代表的な対策機材の1つ「ジャミングガン」は、ドローンの操縦に使用されている電波に向けて、妨害電波を当てることで飛行できなくさせるものです。
ほとんどのドローンはコントローラーからの電波が受信できなくなると、安全措置として、その場で降下するか、操縦者の元に戻るかの動きをするようプログラムされています。「ジャミングガン」は、その仕組みを逆に利用した対策機材なのです。(中略)
一方、日本国内では電波を妨害する行為が電波法に違反するため、原則として利用ができず、警察庁など一部の機関が総務省の許可を特別に得て導入するのにとどまっています。
当初の所有していたジャミングガンの数がわかりませんが、3倍増ということで力を入れていると考えられます。
どのようにしてジャミングガンを使用するかというと…
妨害電波を発することで飛行しているドローンを狙い撃ち。
その場で着陸させたり、電波遮断によって自動帰還を発動させたりできます。
違反的なドローンを見つけた際に、すぐに使用できる。個人的には最有力なドローン対策だと思います。
ただし電波法の関係があることから、民間企業が使用することはできず、警察等の機関のみが許されているため、今後の電波法の改正も考慮が必要かもしれません。
ドローン警戒期間中に、やむを得ずドローンを飛行した話
ツイッターでちょろっと話した内容なのですが、ドローン撮影にあたって警察官の立ち会いをする現場がありました。
簡単に状況を書くと…
- 天皇即位の時期にバッティング
- 飛行自粛要請地域に該当
- 無人機等飛行禁止法の禁止エリアに近い場所(テロ防止のため直前にエリア発表)
本来なら延期をしたかったのですが、台風の悪天候によってスケジュールがズレ込んでしまって。
いろいろと法律的にクリアしているのを確認した上で、管轄警察に相談したところ…ざっくりいうと「やめてほしい」と。
警察署に行って事情等を説明したのですが当然ですね。警察の立場なら同じことを言うと思います。自分でもやんわりと圧力をかけますよ(笑
ただ、警視庁にドローン関係の専門部署があって、諸々と法律的にクリアしていることが確認できたため「条件として警察官1名を立ち会わせてほしい」という流れに。
目的はドローンの飛行自体を監視するわけではないです。こちらはすでに身分を警察に晒しているので。
ドローンが飛んでいるのを通報された場合に、凄まじいほどのパトカーが来るとのこと。
お互いに無駄手間にならないように、現場で対応できる警察官を…という話です。
当日は警察官の1名に立ち会っていただき(ご迷惑をおかけしました!)、ドローン飛行は無事に終了。
警察署に相談していて逆に良かった…という事案です。
今後のドローン対策はどのようになっていくのか?
2020年には東京オリンピックを迎えます。
間違いなくドローン対策は強化されていくはずです。
今回の即位パレードではジャミングガンを3倍に導入したとのことなので、警察にとって今後対抗できる武器が手に入ったわけです。
また、あらゆる想定をなした対応策も即位パレードの警備によって構築できたと考えられます。
ドローンは、その立場から考えると違った見え方になります。
産業に携わっている方にとってはドローンは「便利なツール」として見えています。ドローン宅配やドローン検査など、あらゆる分野で活躍が見込まれるからです。
しかし警察からの「ドローン」の見え方は「やっかいもの」であって当然だと思います。取り締まる立場ですからね。
今後、ドローンによる事故や事件、多大な迷惑行為が発生するのなら、警察の役割である「公共の安全と秩序の維持のための活動」としてあらゆるドローン対策を敷いていくと考えられます。
航空法とセットになっている小型無人機等飛行禁止法も、改正法によって法規制を強める可能性は確実です。
法律の他にも、各都道府県の条例でもドローン対策で強化されています。
たとえば大阪府では大阪サミットに合わせて府条例を制定。実際に警察に捕まって条例違反で6人が書類送検になっています。
サミット会場周辺でドローン飛行 6人を書類送検
大阪府警警備部は6日、サミットに合わせてドローン飛行を規制した府条例違反容疑で、大阪府や京都府の30~60代の男6人を書類送検した。(中略)
会場となった国際展示場「インテックス大阪」(大阪市住之江区)がある人工島・咲洲(さきしま)内の公園で、ドローンを飛ばしたとしている。いずれも写真撮影や飛行練習などが目的で、条例の規制を知らなかったという。
「航空法は知っていたけど、条例は知らなかった」と言ったとしても、定められている条例に違反したことには変わりがありません。
ドローンを飛行させるということは、知識を得ることと、危害を加える可能性があることなど、多くのリスクを追うことを十分に理解しなければならないです。
前述したニュースにも専門家からの意見として…
操縦者を特定するためにアメリカなど各国が設けているドローンの登録制度は日本にはなく、現在、政府で検討されている段階だということです。
南特任講師は「日本では酒を飲んだ状態で飛ばしてはいけないとか、本当に当たり前なルールが形成されているのが現状で、悪意を持ったドローンに対する態勢がまだまだ不十分だ」と指摘します。
海外ではドローンの登録制が進んでいますが、日本は検討段階で大きく遅れを取っています。
さらにルールづくりも運用方法も「あまい」「ゆるい」という意見を聞くことが多く、私自身も同感です。
すでに関西国際空港で滑走路が一時閉鎖されたり、皇居付近で数度に渡る違反飛行があったり、社会的な問題になりつつあります。
警察が知見を広めて、より高度なドローン対策を敷く。2020年の東京オリンピックに向けて、今度の動向がさらに気になるところです。
あとがき
ビッグイベントを経ることによってドローン対策が加速度的に進んでいますね。
ジャミングガンを活用していくのなら、警視庁と総務省との連携で電波法をクリアできるように話がまとまっていくと思われます。
以前より警察の方とお話していますが、「ドローンには対策していく」という流れっぽいです。また取締強化や摘発だけではなく、「No Drone」の周知も同時に進めています。
ドローンのモラル向上、悪用をしないこと、など一人ひとりが認識しなければなりませんね。
いつも警察の方は優しく接していただけて、さらに警察の方のご苦労も目の前で見ています。
こうやって現場感を理解しているからこそ、周知するために「ドローンてそういうものなんだよ」と何度も言ってしまうんですよねぇ。