選ぶのが大変な時代だから「ファンベース」が的確なマーケティングである件

選ぶのが大変な時代だから「ファンベース」が的確なマーケティングである件

こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。

以前は本レビューの記事を書いていたのですが、ここ1年くらいは遠ざかっていました。

ただ、久々に良書に出会えたため、ブログにもしたためますね。

今回の本は、佐藤尚之さんの「ファンベース」です。

私は広告とか宣伝とかのSP広告の畑にいたものなので大好物。以前からマーケティングに長けている佐藤尚之さんの著書を読んで勉強していました。

コミュニケーションという観点からマーケティングを考察している著書が多く、今回読んだ「ファンベース」は今の時代に必要となった視点です。

ビジネスをおこなっている方、特にBtoCをメインとされている方は、新しい気付きを得られるはずです。

ファンに好きになってもらう=最重要である

佐藤尚之さんの「ファンベース」での主張は…

  • コアなファンを傾聴して
  • コアなファンに参加してもらって
  • 企業が成長していく

という「コアなファン」をメインとしたマーケティング手法です。(マーケティングというと嫌らしさが出てしまいますが、企業としての戦略ですね)

今の時代は情報過多で「何を選んでいいのか分からない」「次から次へと情報が流れて目移りしてしまう」と消費者側も混乱して疲弊するのが当たり前の状況です。

例えばロボット掃除機を購入しようとすると…

ロボット掃除機で検索をすれば、あらゆるレビューサイトを目に通して、価格comのような口コミを読んで、機能と値段を比較して。

この時点で「結局、機能がほとんど同じだし、私にとって何を買えばいいのか分からない」と疲れ切ってしまった経験はないでしょうか?

もし仮に、お掃除ロボット「ルンバ」のファンだとしたら話は変わってきます。

選択肢はiRobot社のルンバだけに絞れますし、ルンバの商品の中から機能を比較して購入すれば、買い物もシンプルになるはずです。

企業として「ファンになってもらう」というのが、ファンベースという考えの中で重きを置く理由が見えてきますよね。

著書の中でパレート法則(20:80の法則)に言及しています。全体の顧客の20%が、80%の売上をつくる。つまりファンが企業の売上を支えている事例が多いことです。

商品のUSP(差別化ポイント)は、すぐに真似されて、陳腐化されて、結局は埋もれてしまいます。今はネットという加速度的に情報が流れる時代では、埋もれてなくなるスピードも速いですよね。

一つ昔の話。液晶テレビはシャープでした。プラズマテレビと液晶テレビのメーカー戦争に打ち勝ち、技術者の汗と涙の結晶とも言える液晶テレビ。

ただ、すでにご存知の通り、多数のメーカーが液晶テレビを作り出し、中国メーカーによる安価な液晶テレビで一気に陳腐化されて、もはやシャープの見る影もありません。(その後、シャープは台湾企業に買収…)

どんなに良い商品をつくったとしても、そこにファンが根付かないと企業が廃れてしまう時代というわけです。

ファンベースが成功している事例

「では、ファンがいて成功しているのは何があるの?」と思いますよね。

著書には数多くの事例がかかれていますが、わかりやすいものだけをピックアップして簡潔に紹介します。

AKB48

著者いわく、「AKB48は長期的に渡ってファンベースをおこなっており、どんなに有名になったとしても決してブレずに実行している事例」として紹介しています。

音楽の販売ランキングで不可解な現象が起こるんですよね。たとえばNHKリオデジャネイロオリンピックのテーマソング・安室奈美恵「Hero」は日本人なら必ず耳にしたことがあるはずです。

このテーマソングが、販売ランキングで1位になるのは不思議ではありません。

しかし、誰もメロディを聞いたことがないような曲が1位になることがあります。もう分かると思いますが、AKB48の曲です。圧倒的なコアなファンが爆買いしているんですよね。

コアなファンを大事にするから、どんなに事件があったとしても握手会は続けていますし、ファンが「◯◯推し」として宣伝し続けてくれます。

AKB48は、2005年から活動しています。ざっくり15年も長きに渡って継続する音楽グループは珍しいのではないでしょうか。

スノーピーク

キャンパーの中では有名なスノーピーク。キャンプ用品の中ではやや高価な商品群の位置づけです。商品が高くても売れ続けて、売上高は右肩上がり。たった4年で売上高2倍に成長している企業です。

良質な商品提供をおこなっているのが1つの理由ですが、商品開発のために代表が1年のほとんどをキャンプして過ごしているとか。さらにファンを招いて一緒にキャンプをしたり、定期的にイベントをおこなって企業とファンがコミュニケーションをして、対等な関係を築き上げる。

ファンが企業に共感して、愛着をもって、信頼する。そのために企業はファンと向き合っている良き事例とのこと。

ファンを作るためには

佐藤尚之さんの「ファンベース」には、どのようにファンと向き合えばいいのか、どのようにアプローチをすればいいのか、など具体的な導入方法や施策なども触れています。(概念だけではなくて、より多くのヒントを得られるのが、佐藤尚之さんお著書の魅力です)

  • 新規顧客ではなくファンを優先することを意識的に習慣化させる
  • ただし値引き等のファン優先は愚策。値引きが当たり前になってモンスター顧客になる
  • 他に代えがたいストーリーをオープンにして愛着を覚えるきっかけをつくる
  • コアなファンを身内にして共創する

などなど。著書の中の一節ですが、ずっと頷きっぱなしで読破してしまいました。(詳しい話は買って読んでくださいね)

この「ファンベース」の中では、車メーカーの「マツダ」を何度が取り上げています。

トヨタや日産などの大手メーカーが存在する中で、特定のファンを掴んでいる「マツダ」というのは、クルマ好きにとってはご存知かもしれません。

通常の車メーカーは、新車発表ではマスコミを呼び集めて大々的に発表します。しかしマツダでは、ファンイベントの中で新車発表をおこないます。それだけでファンは嬉しいですよね。

さらにイベントでは開発スタッフが登壇して開発の経緯を話したり、ファンに改善点を聞いたり。とにかく「ファンのために」を貫いている企業として著書では紹介しています。

ファンを優先することによって、クルマの買い換えるときはマツダしか選ばなくなり、「パレート法則の20:80」が成される。そしてファンは「マツダっていいよ」と宣伝してくれる。

BtoCでは企業としても良い循環ができるのですね。

余談:私がファンになった企業

少なからずも「この企業のファン」があるのではないでしょうか?たとえばパソコンはアップル社しか買わない、化粧品はコーセーしか買わないとか。

何かしらの良い体験があって、そのメーカーのファンになるのだと思います。

私がファンになっているのは三菱UFJ銀行です。

法人口座をつくる際には、新規法人の場合は高確率で拒否されてしまいます。法人として実績がないため、銀行側がリスクを取れないんですよね。

法人成りした直後の厳しい状況だったのですが、三菱UFJ銀行は口座を開いてくれて、なおかつ、ハードルの高い共済申込も担当の方が熱心に対応。私としては「難しかったら別にいいですよ」と言っていたのですが、少しイレギュラーに事を運んでいただいたことがあります。

もうこのときに「三菱UFJ銀行に一生ついていく」と決意しましたね。どんなに手数料が高くても、どんなに不祥事な事件で話題になったとしても。

他行の銀行口座をもっていたのですが解約して、いまはメインバンクとして三菱UFJ銀行の1つだけです。(まぁあ、私の話はどうでもいいですね笑)

選ぶのが大変な時代だから、ファンになっていく

この世の中、情報が多すぎです。

消費者はスマートフォンという武器を手にして、あらゆることを調べられるようになりました。と同時に、嘘も本当も含めてあらゆる情報が出回りました

情報を精査して、比較して。頭をフル回転させて、貴重な時間をつかって。もうその作業をするのは疲れますよね。

スマートフォンは便利なのですが、人にとって不便になりつつあるかもしれません。

だからこそ「ファンベース」という考え方は、今の時代に理にかなっています

好きな企業や商品があれば、選択する作業は簡易化されますし、ファンとして企業に接していけば「応援する」という楽しみも持てます。

逆に企業側もファンから支持されるような取り組みをおこなえば、企業経営として疲弊しない体制を設けられると考えられます。

この「ファンベース」には、大企業の取り組みから中小企業の施策まで、現実的に実行できる内容です。

「コアなファンを形成していきたい」「チェリーピッカー(安さだけを好む顧客)に苦しんでいる」というBtoC企業は、読み応えのある、充実感を得られる本だと思います。

あとがき

一方的に与えられる広告(例えばテレビCMや雑誌広告)は、企業にとって都合のいい情報を押し付ける妨害型、ファンベースは望んでいる情報を提供する提供型と著者が説いています。

広告という概念が変化してきて、企業と消費者がファンとして応援できる世の中になると、もっと楽しい生活ができるのではと。

そして、似たようなモノが有り余る世の中だから、これからは「モノの背景に人がいることを感じさせていく」のが重要だと感じましたね。

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