こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ドローンを飛行していると「安定しているなぁ」と見ている方が思うことが多いですね。
「これだったら、事故って少ないんじゃないの?」そう質問する方もいらっしゃいます。
しかし、ドローンの安全性に100%は存在しません。
結局は機械ですので、操縦者の力量や現場環境によって「制御不能」「操縦不能」に陥る事故がいくつも発生しています。
今回は、国土交通省に報告された事故内容をもとに、どのようなトラブルが多いのかを紹介するとともに、自分自身へ気を引き締める記事内容です。
このページに書いてあること
- 1 国土交通省に集められる事故情報より14事例
- 1.1 2016年4月21日 / 急な雨と風で機体を見失い、民家の倉庫に墜落
- 1.2 2016年4月27日 / 操縦経験150時間、制御不能になり林に墜落
- 1.3 2016年6月2日 / 測量中にプロペラが外れて墜落
- 1.4 2016年6月11日 / Go Home で帰還せずに紛失
- 1.5 2016年6月22日 / バッテリー残量低下およびGo Home機能で墜落
- 1.6 2016年6月22日 / 報道機関のテスト飛行中に操縦不能で海上に墜落
- 1.7 2016年7月28日 / 制御不能になり空港に隣接する店舗の普通自動車に接触、墜落
- 1.8 2016年8月7日 / 空撮中に突然動作が停止して墜落
- 1.9 2016年9月1日 / 飛行中に通信が断絶して操縦不能、紛失
- 1.10 2016年10月18日 / 通信が途絶して操縦不能、紛失
- 1.11 2016年11月21日 / 離陸させようとしたら、制御不能になり民家の屋根に墜落
- 1.12 2016年11月27日 / 飛行中に操縦不能になり、木の枝に接触し川に墜落
- 1.13 2016年12月23日 / 練習中に操縦不能になり墜落
- 1.14 2016年2月10日 / 趣味で飛行させて、操縦不能になり紛失
- 2 言いたいことは、ドローンに100%はないこと
- 3 あとがき
国土交通省に集められる事故情報より14事例
無人航空機(ドローン)の法律的な運用は2015年12月と始まったばかりです。
そのため国土交通省では、どのような事故が起きているのかの任意な情報提供を呼びかけています。(知らない方が多数いると思いますが…)
平成28年度に起きた事故報告は1年間で55件。あくまで任意の情報提供なので、実際の数から考えると極少ですね。
その中から気になった14つの事案を紹介します。
※引用はすべて、国土交通省「平成28年度 無人航空機に係る事故等の一覧(国土交通省に報告のあったもの)」より
2016年4月21日 / 急な雨と風で機体を見失い、民家の倉庫に墜落
鹿児島県で個人の方による事案です。
・練習飛行のため、自宅庭で飛行させていたところ、急な雨と風の影響で機体を見失い、約200m離れた民家の倉庫の屋根に墜落した。
・本件事案により民家の倉庫の屋根が破損した。
※なお、操縦者の操縦経験は1時間未満。
気象状況を把握できなかったのが大きな要因と考えられます。
また操縦者がパニック状態に冷静な判断ができる操縦力も、操縦経験1時間未満なので備わっていなかったのかもしれません。
倉庫の屋根に墜落したことで大惨事にならなかったのが不幸中の幸いです。
2016年4月27日 / 操縦経験150時間、制御不能になり林に墜落
撮影依頼を受けた個人の方で、場所は沖縄県八重山郡。機体はINSPIREだと思われます。
・撮影依頼を受けて、河川で飛行させていたところ、制御不能となり付近の林に機体が墜落
し、紛失した。
・後日、機体は回収された。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は150時間以上。
制御不能の原因特定はできていないようですが、操縦経験150時間以上の方なので単純な操作ミスではないと考えれます。
沖縄県の離島(八重山郡)と考えると、空港もなく、携帯の電波の影響も少ないので、機器トラブルでの制御不能の可能性が高そうです。
2016年6月2日 / 測量中にプロペラが外れて墜落
静岡県掛川市、建設業者による測量中のトラブル。機体はPhantomシリーズです。
・空撮測量のため、飛行させていたところ、機体からプロペラが外れ、墜落した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は20時間以上。
飛行中にプロペラが外れるのは、よほどの状況ですね。多少緩かったり、しっかりと付けていなかったら離陸時にプロペラが飛んで行くと考えられますが…。
報告者と国土交通省の見解は…
プロペラのモーター部に砂などが入り込み、飛行中の回転ムラ等によりプロペラが緩んで脱落したと思われる。
とのこと。むき出しなモータ部のメンテナンスは怠ったら、このように事故につながりますね。
2016年6月11日 / Go Home で帰還せずに紛失
福岡県北九州、空撮業者の事故です。これもPhantomシリーズ。
・機体のgo home機能確認点検のため、飛行させていたところ、機体が帰還せず、紛失し
た。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は不明。
テストで go home (自動帰還)を作動させたら、機体が戻ってこなく、そのまま紛失。
機体が回収されたかどうか記載がないので、そのままどこかで墜落していると考えられます。
テスト飛行とは言え、Go Home を過信しすぎて目を離していたのでしょうか。異常を感じたら Go Home をキャンセルして、手動で帰還させることもできたはずです。
2016年6月22日 / バッテリー残量低下およびGo Home機能で墜落
青森県、空撮業者でINSPIREシリーズです。
・空撮のため、飛行させていたところ、操縦操作を誤り、林の中に墜落し、紛失した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は50時間以上。
とのことですが、原因の部分には詳細があります。
【原因分析】
・バッテリー残量の判断を誤り、かつホームロック操作(機体をホーム地点に戻す操作)を誤ったためと思われる。
操縦操作のミスにより墜落ではなく、バッテリー残量とGo Home機能の途中で墜落したっぽいですね。
操縦経験50時間以上、空撮業者でも事故は起きます。
2016年6月22日 / 報道機関のテスト飛行中に操縦不能で海上に墜落
鹿児島県で報道機関がPhantomシリーズをテスト飛行。
・社内訓練のため、飛行させていたところ、操縦不能となり、海上に墜落した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は40時間以上。
「風の影響があった」との記載がありましたが、風だけでは操縦不能にならないので、バランスを崩したのか、風に流されているのを把握できなかったのか。
風の影響から「力量に合わない。飛行させない」という選択をするジャッジも必要です。
2016年7月28日 / 制御不能になり空港に隣接する店舗の普通自動車に接触、墜落
島根県、空撮業者による事故です。
・空撮のため、飛行させていたところ、制御不能となり、空港に隣接する店舗の普通自動車に接触し、墜落した。
・本件事案により普通自動車の左側面ドアに擦り傷を与えた。
※なお、操縦者の操縦経験は300時間以上。
空港付近でもしもの大惨事が起こり得る事案です。
自動車に接触して墜落したのも不幸中の幸いだったかもしれません。操縦経験300時間以上のベテランでも制御不能になり得る=ドローンは100%ではないです。
2016年8月7日 / 空撮中に突然動作が停止して墜落
東京都千代田区の繁華街、空撮業者による事故です。機体はINSPIREシリーズ。
・空撮のため、飛行させていたところ、突然動作が停止し、墜落した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は30時間以上
突然モーターが止まって墜落。飛行高度は不明。
原因として報告されているのが、
高温環境での飛行によりメーカーの規定する動作保証温度40度を超え、異常加熱によるバッテリーの出力電圧が低下したため動作が停止したものと思われる。
とのこと。あくまで可能性の話なので、一概にバッテリーの問題ではないかもしれません。
日本の夏は暑いので、もしバッテリー関連なら他にも同様の事案が出てくるはずです。単純なバッテリーの不備ではなさそうな気がします。
2016年9月1日 / 飛行中に通信が断絶して操縦不能、紛失
京都の人口集中地区、空撮業者による事故です。これもINSPIREシリーズ。
・空撮のため、飛行させていたところ、通信が途絶し操縦不能となり、紛失した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は80時間以上。
人口集中地区で操縦不能になって、そのままどこかへ飛んでいって紛失…。想像しただけでも怖いですね。
INSPIREは機体が大きいため風に強いですが、Phantomと比べると安定性がないと言われますね。
ファームウェアアップデート後に何らかの不具合が生じた可能性が考えられるが、原因は不明(特定に至らず)
民家や第三者に影響がなかったのがなによりです。
2016年10月18日 / 通信が途絶して操縦不能、紛失
鹿児島県の空撮業者。
・空撮のため、飛行させていたところ、通信が途絶し操縦不能となり、紛失した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は10時間以上。
山間部での飛行っぽいようなのですが…
・直線的な見通しの範囲外となり通信が途絶え、また、山の斜面により捕捉するGPS数が不足したため自律飛行が中断し、通信途絶時に起動する自動帰還が作動しなかったためと思われる。
GPSの本数が少なくなり、自律飛行ではなくGPSなしでの飛行に。その後、通信が途絶えるが、自動帰還が作動せず。そのまま紛失。
2016年11月21日 / 離陸させようとしたら、制御不能になり民家の屋根に墜落
研究機関での空撮、機体はPhantomシリーズ(もしかしたら古めのシリーズかも)。
・植生調査の飛行を終え、着陸させようとしていたところ、機体が制御不能となり、約700m離れた民家の屋根に墜落した。
・本件事案により民家の屋根に損傷を与えた。
※なお、操縦者の操縦経験は20時間以上。
着陸しようとしたら制御不能になり、そのまま700m離れた民家に墜落。
700mと言ったら、もはや人間の目では見られない距離です。文章上から推測するに、バッテリー残量がなくなって落ちたっぽいです。
2016年11月27日 / 飛行中に操縦不能になり、木の枝に接触し川に墜落
神奈川県足柄上郡、個人の方で機体はPhantomシリーズ。
・趣味のため、飛行させていたところ、操縦不能となり木の枝に接触し、川に墜落(水没)した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は4時間以上。
この場合は「操縦不能」というには少し微妙かもしれませんが、制御できずに障害物に接触して墜落。
機体のトラブルもしくは操縦技量、距離感の見間違いなど様々な要因がありそうです。
2016年12月23日 / 練習中に操縦不能になり墜落
沖縄県での空撮業者、機体はPhantomシリーズです。
・練習のため、飛行させていたところ、操縦不能となり、紛失した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は30時間以上。
空撮を行っている、操縦に慣れている業者でも操縦不能に。練習中とのことですので、なにか飛行テストでもしていたのでしょか…。
2016年2月10日 / 趣味で飛行させて、操縦不能になり紛失
一番最後に、もっとも危険なもので締めくくります。
岡山県で個人の方、Phantomシリーズ。
・趣味のため、飛行させていたところ、操縦不能となり、紛失した。
・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
※なお、操縦者の操縦経験は0時間。
これが不思議だったのが、「人口集中地区」かつ「物件から30m以内」のエリア・条件だった場所。
そして操縦経験はゼロ。当たり前ですが国土交通省の許可は未取得。
いきなり操縦させて、コントロール不能になって、そのまま紛失…。Go Home も作動していなかった(未設定だった!?)ところを考えると、もはや危険すぎです。
言いたいことは、ドローンに100%はないこと
なにも事故の事案を列挙して、不安を煽りたいわけではありません。
操縦経験のあるベテランでさえ、操縦不能になって紛失・墜落している状況を知ってほしいからです。
ベテランでさえ事故が起きるのですから、初心者の方ならもっと操縦不能・事故・紛失が起こる可能性はグンと上がるのは言うまでもありません。
「ドローンは安定している」そんな過信が、ときに操縦不能になり、事件を起こします。
飛行エリアの環境を把握して事故を未然に防ぐ、最悪の状況になったとしても冷静に対処できる力量を備える。
もう一度いいます。ドローンに100%は存在しません。
クルマは何かあれば停車できますが、ドローンは何かあったら墜落します。
どれだけ知識・経験、そして対処法を身につけるかが、最悪の事故を引き起こさない発端と言えます。
あとがき
ドローンのふんわりとしたイメージが広がっているので、「いやいや違うよ」という意味で記事にしました。
機体トラブルもありますが、ほとんどは操縦者のミス(操縦、メンテナンス、環境把握など)が起因だと考えています。
無理をする、容易な気持ちになる。それだけで、いっきに事故を引き寄せるのを忘れてはなりません。
ちなみに、事故が起きた場合には、国土交通省への情報提供をしましょう。法律違反云々ではなく、そもそもドローン関連の法律は発展途上の制度なので。
万が一、無人航空機の飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案が発生した場合には、国土交通省、地方航空局及び空港事務所へ情報提供をお願いします。なお、安全に関する情報は、今後の無人航空機に関する制度の検討を行う上で参考となるものであることから、航空法等法令違反の有無にかかわらず、報告をお願いします。
28年度で55件が情報提供されていますが、実際には何百件の事故等があるのかなぁ…。