こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ドローン関連のことをインターネットで調べていくと、必ず目にするようになるのが「ドローンスクール」です。
ドローンスクール自体が始まったのは、(記憶している限りでは)2016年の春頃からです。この記事を書いている時点で、わずか1年前ですね。
この歴史の浅いドローンスクールなのですが、2017年4月から国土交通省航空局による新しい制度が導入されました。
これによって、個々のドローンスクールの価値が大きく揺らぐことに…。
スクールを検討している方に向けて、新しい制度とその価値についてご紹介しますね。
このページに書いてあること
今までのドローンスクールは、講習内容は独自基準で作られていたのがデメリットだった
2016年の春頃からタケノコのごとく、ドローンスクールなるものが全国に作られました。
では、そのドローンスクールというのは何なのか?と端的に言うと、「企業や団体が教える場を設けて”スクール”と名乗っていた」が分かりやすい説明かもですね。
一般社団法人が設立したドローンスクールもあれば、一企業がぽっと出で作ったドローンスクールもあります。
そして人々を迷走させたのが、スクール発の民間資格です。
「資格をゲットしないと飛ばせないよ!」的なニュアンスに近い宣伝手法で惑わされた方が多くいらっしゃいます。(この手の質問が多すぎて…)
各スクールで卒業をすれば、民間資格を得られるシステムだったのですが、ただの民間資格なので何も効力が無いんですよね。
スクール自体は、それぞれ独自に講習内容をつくっています。
つまりAというスクールでは10項目、Bというスクールでは15項目…。さらに1つの項目で中身が全く違う、というは当たり前の状況です。
Aスクールで卒業した人、Bスクールで卒業した人を比べると、知識も技量も大きな差が有るわけです。
「何も基準がない」これこそが、ドローンスクール全体のデメリットでした。(だから、国土交通省の申請時にも効力がなかったんですよね)
2017年4月から国土交通省航空局が基準を設ける
もし法律に規制されたエリアや条件で飛行させる際に、国土交通省が審査の後に許可書を発行する仕組みがあります。
申請・審査・許可、この一連の流れで国土交通省が担っていたのですが、ボリュームが大きくてパンクしちゃったんですよね。申請しても1ヶ月先…というのはザラでした。
国土交通省がすべての要件を審査しているので、少しでも審査作業を軽減できたらと考えたのが、ドローンスクールを利用した技能認証制度です。
2017年4月からスタートした技能認証制度、いったい何のかをせっかくなので深掘りしてご説明します。
ドローンスクールが技能認証を得ているのか、得ていないのか。これによって、そのスクールの価値も変わってくるので、これから検討する人も要チェックです!
ドローンスクールが技能認証の概要
すべてのドローンスクールが技能認証を得られるわけではありません。
基準を超えたドローンスクールのみに付与されて、(技能認証後に)そのドローンスクールを卒業した人が、国土交通省の審査項目で一部がパスされる。つまり書類作成がやや楽になるというメリットが生まれます。
技能認証を得たスクールは、国土交通省のWEBサイトに掲載されるので、もうスクール運営側はもう必死なはずです。だって、生徒集めが楽になるからですね(笑。
管理者・教官の配置
講習を実施できる人で、その人に権限があるのはスクール管理者として当然なのですが、教官もガチな人でないとNGなのです。
次に掲げる要件を満たす教官であって、講習等を適切に実施できると認められる者を必要数以上配置していること。
・飛行経歴が50時間以上である者。
・教官任用教育(担当する講習等の内容、教育及び審査技法並びに担当する講習等のオブザーブ)を受け、管理者が講習等を適切に実施できると認めた者。
飛行経歴が50時間以上である有識者。なおかつ、教育できる能力(教官用教育)を持っていることが条件です。たぶんですが後者に関しては、DJIインストラクターのみが有効そうですね。
組織の運営方法
これがちょっと興味深い。
a 講習等に係る責任体制及び役割が明確に定められていること。
b 当該講習等を1年以上行っていること。ただし、これまでに100人以上の講習等の実績を有し、継続して運営できる能力を十分有すると認められる場合は、この限りでない。
c 講習等に必要な施設及び機材を使用することが可能であること。
ドローンスクールが講習を1年以上おこなっていないと、そもそも技能認証に申請できません。
幸いなことに、「今まで100人以上の実績があればOK」とあるので、それなりに規模の大きいドローンスクールは救われますね。
しかし、これからドローンスクールを立ち上げようとする人は、かなり厳しいと思われます。
まず、1年以上の運営をしなければならないという点。ロケットスタートができないのです。
さらに技能認証されていない状態で、100人以上を集めなければなりません。かたや、すでに技能認証を受けて国土交通省のWEBサイトに掲載されているドローンスクールがいる中で。
生徒側の目線で言うと、技能認証されているか否かは重要なポイントです。これから立ち上がる実績も技能認証もないスクールは、果たして生徒から選ばれるか…という懸念がありますね。
講習等の実施方法
ここがちょっと雑(笑。
a 講習の内容(使用する教材、カリキュラム(少なくとも別添1と同等以上 の内容を含むこと)及び飛行マニュアル)が、飛行形態(基本飛行、夜間飛行、目視外飛行及び物件投下)に応じて定められている審査要領の内容を含んでいること。
b 講習課目は、学科と実技の内容を含むこと。
c 講習期間は2日間以上とし、適切な時間数が定められていること。
d 講習後に実技による技能審査を行い、飛行形態に応じて操縦に必要な知識及び技術を有し、かつ、飛行時間が10時間以上であることを飛行記録等で確認し、それを証する技能認証の証明書を発行すること。
要約すると、ドローンスクールでは飛行マニュアルに沿った教材および飛行方法をマスターさせること。
そして2日間以上、さらに生徒は10時間以上をそのスクールで行っていること。
実質的に2日間で詰め込むのは、かなりハードなわけで。しかもスクールで10時間(1日5時間!)も操縦し続けるも精神的にキツイわけで。
普通に考えたら、7日間~10日間は必要ですねー。
その他、もろもろ
ここで全部紹介するのはボリュームがあるので割愛しますが、その他にも…
- 管理者や教官の実績を提出せよ!
- 講習内容を作り上げて提出せよ!
- 生徒等の能力を記録せよ!
- 国土交通省航空局に3ヶ月毎に運営実績を提出せよ!
などなどあるわけです。
その上で、該当できたドローンスクールが技能認証のドローンスクールとしてWEBサイトに掲載される流れです。
航空局は、3.を確認し適当と認められる場合は、願出者にその旨連絡するとともに、速やかに航空局のホームページへ講習及び技能認証を確認した団体等として掲載することとする。
しかし当然ながら運営状態によっては、取り下げもあり得るのです。
団体等から航空局ホームページ掲載について取りやめの希望があった場合又は団体等が3.に掲げる要件を満たさなくなった場合には、当該団体等をホームページへの掲載を取りやめることとする。
上記に書いたような条件を運営側は常にクリアしていかないと、そこを受けた生徒も被害を被りそうですね。
ドローンスクールが技能認証の価値
技能認証を受けたドローンスクール。
生徒としては国土交通省航空局が認めたドローンスクールと、未承認のドローンスクールがあるのならば、どう考えても前者に通うほうが価値があります。
では、そこを卒業した上で得られる価値はどうなのか?という点は気になりますよね。
国土交通省が発表している文章を読み解く限り、あくまで「書類の一部を省略できる」ということです。
当該団体の講習修了者は、飛行許可を受ける際の申請書類の一部を省略 できる仕組みを、平成 29 年 4 月より開始しました。
もう一度書きますが、一部を省略できる仕組みです。
たぶんですが、20枚くらいの申請書の中で2・3枚くらいを省略できるイメージを持って頂くといいかもです。
加えて勘違いしてほしくないのですが、操縦者は絶対に必要な技能認証ではありません。
操縦者が当該団体等の講習を受けるかどうかはあくまで任意であり、講習を受講しない者でも、従来どおり飛行許可・承認の手続は可能です。
国土交通省が思いっ切り記載してあるとおり、講習を受講しなくても飛行許可・承認の手続きは可能です。
もはやこれは人の価値観の違いですが、技能認証を受けているドローンスクールに通うか否か、その投資額、得られる技量・知識など、トータル的な判断が必要ですね。
少なくとも今まで無法地帯だったドローンスクールに、「ここは意味がある」「ここはどうかな!?」という判断基準を作れたという点で、生徒側は嬉しい知らせです。
だからこそ、「ゼロの状態だから、しっかり知りたい」という方なら、技能認証されたドローンスクールは(お金を払って)手っ取り早く、確実に得られる大きなメリットがあると思います。
技能認証されたスクールの調べ方
国土交通省のドローン関連のページが存在します。
PDFでの一覧になりますが、ずらーっと表示されています。(航空局ホームページに掲載されている講習団体を管理する団体PDF)
あとがき
正しい知識や技能を教育していくスクールは、今後事故や事件を増加させないためにも必要不可欠です。
まだスタートしたばかりですが今回の制度で、ある程度是正されるといいですね。
そして気をつけないといけないのが、「技能認証スクールでないと申請できない!」と言った”煽り広告”に騙されないことです。