こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ドローン(100g以上)には航空法が適用されています。
飛行するには複数のルールがあり、その1つのルールに「人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること」があります。
この言葉だけでは、なかなか読み取れないですよね?
そこで今回のブログ記事では…
- 「人又は物件との間に30m以上の距離」の定義は何なのか?
- どのような飛行ケースで制限がかかるのか?
- あまり知られていない罠とは何なのか?
この3点を中心に、法律適用が思いっきり高い「人又は物件との間に30m以上の距離」について、より分かりやすく解説します。
「これは知らなかった…!」では済まされない法律なので、十分に注意してください。
このページに書いてあること
まずは「人又は物件との間に30m以上の距離」を簡潔に
日本には航空法があり、100g以上のドローンは法律の対象となっています。
その法律のなかにある1つが「人又は物件との間に30m以上の距離」というものです。
思いっきり簡潔に言うと、ドローンが飛行している間は、人や物件から30m以上の距離を保つように…というものです。
写真イメージをつくってみました↓
人から30m以上の距離というのが、まさに↑ですね。
さらに…
物件(今回は建物)から30m以上の距離も↑ですね。
このような感じで、人や物件から30m以上の距離をを常に離れなければなりません。
人や物件に30mという球体バリアがあって、その中にドローンは入れないと考えると制限領域が見えてくると思います。
そもそも「人」と「物件」とは何なのか?
人と物件とは何かのかが気になりますよね。
これは国土交通省のQ&Aページから参照すると、とても理解が早くなりますし、間違いもありません。(※以下引用元は国土交通省のQ&Aより)
人の定義
最初に人の定義です。
「人」とは無人航空機を飛行させる者の関係者(例えば、イベントのエキストラ、競技大会の大会関係者等、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外 の者を指します。
つまり、人=第三者です。
ドローンを飛行させる上で、操縦者や直接的に係る人(例:依頼者)たちは30m以内の飛行はOKですが、関係しない第三者や物件とは30m以上離れる必要があります。
- 撮影者および監視員にドローンが30m以内 ・・・ OK
- 撮影者および建物の所有者にドローンが30m以内 ・・・ OK
- 撮影に間接的に関わらない撮影を知らないスタッフにドローンが30m以内 ・・・ NG(申請が必要)
- 施設内に第三者が出入りして歩いている中でドローンが30m以内 ・・・ NG(申請が必要)
第三者が1人でもその場にいる場合には30m以上離れなければなりません。
物件の定義
次に物件についてです。
「物件」とは飛行させる者又は飛行させる者の関係者(例えば、委託元等、法令で定める距離(30m)内に無人航空機が飛行することを了承している者)が管理する物件以外の物件を指します。
関係者の物件は30m以内の飛行はOK、ただしそれ以外の物件は30m以内の飛行はNGです。
例えば、撮影対象物の建物があった場合、対象物の所有者から依頼をされているので30m以内の飛行はOKですが、対象物の隣に別の所有者の建物があったら離れる必要があります。
建物同士が隙間なく隣り合っていた場合、両隣の建物が別所有者に挟まれていたら30m以内の飛行もNGとなるケースが多々あります。
どのようなものが物件なのか?
物件と言ってしまうと範囲が広いのですが、どのようなものが物件なのでしょうか?
a)中に人が存在することが想定される機器
b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物等具体的な「物件」の例は以下のとおりです。
車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等
工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等※なお、以下の物件は、保護すべき物件には該当しません。
a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
b)自然物(樹木、雑草 等) 等
分かりやすいように要約すると、人工的に作られたものですね。
物件とは人工的につくられたもの、つまり建物やクルマ、クレーン、陸橋、電柱、電線などです。
特に気をつけたいのは、電柱&電線。
ほぼ人が住む場所には、電柱&電線は張り巡らせており、かつ前述した関係者の所有物ではないです。(NTTや電力会社の所有物)
となると、ほぼ生活圏には30m飛行NGのバリアが張ってあると考えられます。
逆に「草木や樹木」は自然物のため、ドローンが近づいても「第三者の物件」に該当しないため30m以内の飛行でも大丈夫です。
どのエリアで「人又は物件との間に30m以上の距離」が適用されるのか?
「では、どこのエリアで、このルールが適用されているの?」と疑問に思いますよね。
これは日本全国のありとあらゆる場所で適用されているルール(法律)です。
具体的に…
- 人口集中地区ではないエリアでも適用
- 自宅の庭でも適用
- 離島でも適用
このような日本なら、どのエリアでも「人又は物件との間に30m以上の距離」を保たなければなりません。
違反するとどうなるのか?
航空法にある飛行方法のルールとして定めらています。
(7)地上又は水上の人又は物件との間に一定の距離を確保した飛行
飛行させる無人航空機が地上又は水上の人又は物件と衝突することを防止するため、航空法第 132 条の2第7号により、当該無人航空機とこれらとの間に一定の距離(30m)を確保して飛行させることとしている。
つまり、30m以上の距離を保っていない状態でドローンを飛行させると、航空法第 132 条の2第7号による違反行為になります。
航空法では、罰金刑50万円以下に処されることになります。
30m以上の距離には、あまり知られていない罠がある
ここまでで「人又は物件との間に30m以上の距離」を保たないと、航空法違反になるのは理解できたと思います。
しかし、ここではさらに深くまで解説します。
実はあまり知られていない罠が存在します。「知っていなかった」と言って飛行させていたら、いつの間にか航空法違反に該当している場合があるので、十分に気をつけてください。
罠その1:離発着する際にも30m以上離さなければならない
「上空にいる時に30m離せばいいんでしょ?」と勘違いする人が多いのですが、ドローンが飛行している間のすべてが30m以上を離さなければなりません。
飛行というのは、地上から1cmでも浮かび上がったときに「飛行」となるわけです。
つまり、離発着するときも「30m以上を離す」が含まれます。
離陸する時に、その近辺にガードレールや電柱・電線などの人工物が存在すれば、それは物件にあたるため、航空法違反に抵触します。
例えば↓の写真で…
空が広がっていて「30m以上は保てそうだ…」と思っていたとしても、手前にガードレールが設置されています。
これは第三者の物件に該当するため、この場所でのドローン離発着はNGになるわけです。
もし離発着を含めた飛行をするのなら、もっと川辺に近い位置でないと30m以上の距離は確保できません。
飛行というのは、離発着+空中であることを忘れてはいけません。
罠その2:場所の許可を受けても第三者の物件から30m離す
少し突っ込んだ30mの話です。
第三者の物件が30m以内の飛行を法律的に禁止しています。
では、物件管理者から許可を受けた場合には、この30m以内は除外されるのかどうか?
例えば、某公園の管理者から「ドローン飛行してもOKです。ただし航空法は守ってください」と言われたとします。
公園の中には柵や電灯などの人工物が存在します。
公園管理者から許可を受けた場合は、この柵や電灯から30mの対象から外れるのか?
答えはNOです。
もし飛行した場合には、違反行為になります。(※国土交通省に3度確認済み)
国土交通省の見解は「公園管理者の許可を受けたとしても、ドローン飛行時に管理者はいない。第三者の物件のままである」とのこと。
つまり公園管理者がドローンOKとは言ったとしても、人(第三者)または物件(第三者)から30m離さないと違反になります。
同様の件で除外になるケースは「依頼されている」ことです。
公園管理者から撮影を依頼されて、ドローン飛行時にも管理者がいて、了承を得ている場合です。これは分かりづらいですが、国土交通省Q&Aにも記載があります。
また、「物件」とは飛行させる者又は飛行させる者の関係者(例えば、 委託元等、法令で定める距離(30m)内に無人航空機が飛行することを了承している者)が管理する物件以外の物件を指します。
たとえば委託元から依頼をされており、30m以内の飛行を了承している場合に限って該当しないということなります。
前述の公園管理者については「航空法を守ってください」といっており30m以内の飛行を承認していません。かつ、公園管理者が依頼している立場ではありません。
「場所の許可を得ている」とは言ったとしても、依頼元ではない限り、30m以上を離すことになるので注意が必要です。
人または物件から30m以上離れた飛行をする
この30mという話は誤認が生まれやすいですが、そもそも30m以上離せば問題ありません。
- 人に近づかない
- 物件に近づかない
この2つを守るだけの、シンプルな飛行ルールです。
離発着および飛行中は、安全も考えて30m以上を離すように飛行し続ければ問題はありません。
例えば…
このような海岸なら、物件はありませんし、人もいないですよね。
これなら離発着や飛行中でも30m以上を話せるため飛行OKになります。
ただし上空にドローンがいたとしても、人の頭の上は安全面から考えて飛行させてはダメです。
第三者の上空を飛行させるのは、飛行方法でも禁止されていますから。
30m以上の距離は厳しすぎる!?
ドローンを始めたばかりの方にとって、「この30m以上の距離は厳しすぎる!」と感じるかもしれません。
しかし、実際にドローンを飛行させると、第三者にとって「ドローンは危険物体」です。超高速でプロペラ回転しているため、顔にでも当たったら、間違いなく切れます。
また、電線にぶつかったら切れる可能性もありますし、建物などに衝突して墜落、その下に人が歩いていたら間違いなく怪我を負わせます。
ドローンはぜんぜん安全ではないのです。
「操縦ミスで木にぶつけてしまった」「操縦不能になって、急に墜落した」
そのような話をよく聞きます。
だからこそ、少しでも安全性を高めるために、30mの距離という飛行ルールがあるのです。
決して厳しいルールではありません。第三者を守り、物件を傷つけないための最低限のルールです。
ドローンを飛行するというのは、操縦者はリスクを背負っていることを忘れてはなりません。
あとがき
人と物件が明確になると、どのようにして30mを離して離発着+空中での飛行をするかを考えやすくなります。
一般的に、人口集中地区エリアのドローン飛行禁止が「ドローン規制」だと思っているひとが多いですが…
実際には「夜間飛行禁止」「イベント時の飛行禁止」などと同列で、「人又は物件との間に30m以上の距離」があります。
離発着地では、必ず「人又は物件との間に30m以上の距離」を取るようにしましょう。