こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
2023年3月30日、SNS上で衝撃が走ったのが自衛隊護衛艦「いずも」の空撮映像。
甲板を舐めるようにしてドローン撮影された動画は「AI生成によるフェイク動画だ」「本物だ」と物議を醸し出しました。
そこで今回のブログ記事では…
- 「いずも」のドローン撮影騒ぎ
- どのようにドローンを飛行させたのか
- 今後の考えられる対策
この3つを中心に「いずも騒ぎの考察」を情報シェアします。
真相不明ですので、ゆるい感じのよもやま話だと思ってください。
このページに書いてあること
「いずも」のドローン撮影騒ぎ
まずは、騒ぎの根源となった動画です。
开飞机降落自慰队航母 pic.twitter.com/DvZGgBCruT
— 这是我小号4 (@Xiao_Hao_4) April 1, 2024
横須賀基地に停泊中の「いずも」、甲板を舐めるようにしてドローン撮影されています。
この動画はSNS上で物議を醸し、
- 誰一人とも歩いていないから状況がおかしい
- 波の方向と国旗の旗の方向に違和感がある
- 甲板にあるはずの艦番号が薄れている
とフェイク動画の意見が多数。あまりにも出来すぎている動画のため、個人的には「これが生成AIで作られたら、もうドローン空撮なんて不要じゃないか」と危機感が募ったほど。
この騒ぎから、防衛相+海上幕僚長が会見をおこない
- 『悪意をもって加工、捏造(ねつぞう)されたものである可能性を含め、現在分析中』
- 『不自然な点はあると思うが判断しかねる』
明確なコメントを避けつつも、フェイクの可能性を滲み出していました。ただ重大な国防に関わることなので両名ともに立場上「100%本物だとしても、本物とは言わない」と思われます。
一方、SNS特定班は類まれな能力を発揮して
- 天気や停泊位置を考えて2024年2月16日前後に撮られたモノ
と具体的な日時まで割り出し、この「いずも動画」は人々の想像を掻き立てる騒ぎに発展。
そんな中、撮影者本人らしき人物が登場し「いずも」の静止画、「原子力空母ロナルドレーガン」の静止画を掲載して、ほぼ本物確定に至ったわけです。
More Izumo pictures pic.twitter.com/bP6HQTOFTw
— 这是我小号4 (@Xiao_Hao_4) April 3, 2024
— 这是我小号4 (@Xiao_Hao_4) April 4, 2024
邪推になりますが、撮影者は中国人であるため、航空法や小型無人機飛行禁止法といった法的概念はなく、承認欲求のために撮影したものであると思われます。
幸いなことに、ドローンに爆発物や生物兵器を載せているわけではなく、ただの撮影だったので大事にはなりませんでしたが、過去、首相官邸の屋根にドローンが墜落したのと同様、国防的に衝撃度は高いと思われます。
どのようにドローンを飛行させたのか
「どうやったら、いずもが撮れるのか?法律があるじゃないか!」
そう思うかもしれませんが、難しいことを考えずとドローン飛行は容易です。
ここからはドローン操縦者の視点で勝手に書いてみます。
まずは日本にはドローンに関わる法律があり、今回のケースでは
- 航空法(DID、30m以内の飛行禁止、目視外飛行)
- 小型無人機飛行禁止法(自衛隊基地周辺/レッドゾーン)
が該当します。
小型無人機飛行禁止法は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっているため、飛行するのも高リスクです。
ちなみに今回は中国人であって、すでに本国に帰国していると思われます。
横須賀基地への操縦場所
飛行内容から推測すると、操縦者がいたであろう場所は安針台公園と思われます。
ちょっとした高台にある公園で、横須賀基地を見渡すことができます。ドローン的にも、電波が届きやすく、空間が広いので多少遠くにも飛ばせられます。
この高台から「いずも」が停泊していた場所までは直線600m。航空法では目視外飛行になってくる距離ですが、ドローン飛行には問題ない距離です。
DJIのGEO区域による飛行制御
ドローンメーカーのDJIでは独自に各国の法律に基づいて、GEO区域による飛行制御をおこなっています。
例えば、空港のような飛行禁止エリアでは飛行制御をおこなっており、ドローンの電源を入れてGPSを捕まえた時点で、どんなにリモコンを動かしても「離陸不可」になります。
本来なら横須賀エリアは、小型無人機飛行禁止法によって飛行禁止になっているため、飛行制御をおこなっても良いはずなのですが…
赤丸のつけた対象地は何も飛行制御はされていない状況です。
つまり、今の現状では誰もが横須賀基地周辺でドローンを飛行できてしまいます。
今回の操縦者はDJI特有の飛行ルートをアップしており、DJI機を使用したと考えられます。
For anyone who thinks it’s fake pic.twitter.com/PdfwHAnwqj
— 这是我小号4 (@Xiao_Hao_4) April 2, 2024
今後の考えられる対策
SNSで騒ぎになり、防衛相や幕僚長といった組織のトップが認識している事案になりました。
どう転んでも「失態」になるため、最後まで有耶無耶にして真相不明になると思われます。
ただ可能性として、
- 自衛隊基地のドローン対策強化(ドローン対策機器の導入?)
- 警備体制のルール策定(甲板等に常に人員を配備?)
などドローン対策を敷かれ、各現場が若干面倒くさくなっていそうな気がします。
大きな事件になっていないため、法規制を強めるとは考えにくいですが、何かを変えるキッカケの1つになるかもしれません。(過去、関空の滑走路にドローン侵入が連発し、空港禁止がより強化されました)
もっとも簡単な対策として、今回の騒ぎから DJI JAPAN がGEO区域の飛行制御ルールを改めて、最新の小型無人機飛行禁止法の対象エリアをアップデートする可能性は高いです。
法律を強化したとしても、日本語が分からなければ意味がありません。システム制御がベターかもしれませんね。
今後、模倣犯が出てこないよう、対策を願うばかりです。
あとがき
「フェイクだ」と議論になりましたが、本物と偽物の境界線が無くなってきている証拠かもしれませんね。